渥美俊英さんインタビュー ~AWSとスカイアーチ~第3章 『AWSは今までのITベンダーと何が違うの?』

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2017年よりスカイアーチ顧問に就任された元AWSエバンジェリスト、渥美俊英さんに、
スカイアーチ専務の高橋が、これからのクラウド業界について、
さらには、なぜスカイアーチの顧問を引き受けていただいたのか、
改めてお話をおうかがいしました。
ロングインタビューになりましたので、第1章~6章に分けて、ご紹介させて頂きます。

第1章『ITとのかかわりと今後のクラウド業界』
第2章 『クラウドと仮想化は似て非なるもの?』


第3章
『AWSは今までのITベンダーと何が違うの?』

高橋
渥美さんが30数年にわたってIT業界でお仕事をされてる中でも、このAWSが牽引しているクラウドビジネスっていうのは、大変ユニークな仕事の立て付けだったり進め方で、10年以上成長してきました。
特に、ここ数年での成長が著しいという訳なんですけど、今までのITのベンダーと一番違うところって何でしょうか?

渥美
クラウドの中でも特にAmazonが今までのベンダーと大きく異なる点というのは、その文化とか行動様式にあると思っています。
re:Inventで感じた事はもう一つあって、とことんユーザーの事を考えているんです。
ユーザーの事を考えるという事は、どこの企業でも行っている訳で、お客様のために企業活動はあるとう大前提はあるのですが…今までのIT業界というのは、どうしても新しい製品を開発して投資を回収する、であるとか、売りたいものを売っているという、企業主体のビジネススタイルだったと言えます。
Amazonの場合は何が違うかというと、ユーザーからのリクエストを実直にソフトウェアで実現していく。そして、今までにない事柄というのは、パートナー企業に粗利を出すという事をしないんです。これはAmazonが最初に言った事ですね。
今までのITベンダーというは、パートナーに一定の利益を出す構造があったのですが、その分は全て製品のPrice(価格)を下げると最初に明言しています。
当初、そのようなITベンダーとのパートナーシップというのは難しいと敬遠されると考えられたのですが、猛烈に新しいサービスを提供するとか、実際にユーザーが使い始めるということによって、Amazonの在り方を認めていくというユーザーの大きな動きになっていったのだと思われます。

高橋
僕の雑駁な理解だと、GoogleにしてもAWSもですが、ユーザー企業がITのベンダー側に周るという事が、とても珍しいと感じます。
そういう意味で言うと、使い手自身がテクノロジー会社になっているというのは、IBMも違うしMicrosoftも違う… Amazonのシステムにも絡むスタッフが提供しているという事と、自分たちが使っている技術をそのままパートナーに使わせるという、そういう話に僕自身は感銘を受けました。
しかし付き合い方が良くわからなかった。彼らには接待交際費もないわけで…なぜなら、パートナーには粗利を出さないから接待もしない。「おぉ、なるほど」とカルチャーショックを受けたのを記憶しています。

渥美
それは大きなカルチャーショックでしたでしょうね。
ITの歴史って大手のIT企業もっぱらハードウェアを扱う企業が、ソフトウェアも含めて提供していくっていうのが、これまで何10年かの大きな流れでしたが…この10年余りというのは、実はクラウド事業者がその革新的技術をユーザーに提供している。
新しいITの革新ってほとんどクラウド事業者から出てきているという動きになっていると思いますね

高橋
パブリッククラウドにおいて、何故、AWSが格別にリードしているのか?「何故?」って理由付けって出来そうでしょうか?
始めた時期とか?小島さん(注.1)も仰っていましたけど、「何で本屋がそんなことしてんの?」ってバカにされていた時期があったのに、いつのまにやら「AWS」が"錦の御旗"になって、みんなそっちに乗っかった方が良いってなっている…ちょっと前まではそんな感じではなかったですよね。

渥美
1個1個のITベンダーって、製品を売って粗利を求めるという構造があるので、その企業が提供する、ベンダーのインフラを利用した新しい製品を使うためには、コンサル担当であったり、操作してくれるエンジニアを付けてもらわないと使う事自体が難しい、という部分があったかと思います。
しかし、Amazonの場合は、そこも今までのITベンダーと大きく違う処となるのですが、ソフトウェアで実現する。そして、人の工数を極力下げているという事を重要視しているのだと思いますね。
今までのITベンダーでしたら、大手の難しいお客様、お金を持っているお客様に対しては、多くの粗利を見込んで、個別対応してソリューションを提供していたと思うんですけど、Amazonの場合は米国の政府でも、NASAでも、軍が使うものでも、個別の対応を一切せずにすべて共通のソフトウェアでサービスを提供しているわけです。
これが今までのITベンダーと考え方が大きく違う処ですね。すべて"共通の"ソフトウェアで実現して提供する。
なのでキビシイ大手の企業が要求したことを実現したソフトウェアを、たった一人のエンジニアでも、スタートアップの企業でも、同じサービスが同じ値段で使える。

これがかつてない大きな違いだと思うんですね。
その事をユーザーが理解し、Amazonの手法の方が、合理的で効率的だという風にわかってきた処が、潮目が変わってきた原因かなと思いますね。
面白いのは、よくイベントなんかでユーザーが事例を発表しますが、そういう時に、今までのITベンダーで基調講演をするようなお客様って、よほどその製品にお金をかけてきてカスタマイズだとか特別な要求をしてきたお客様が多かった訳です。
同じようにスタートアップがやろうかって言うと絶対にできなかった。
ですが、ここが今までのITベンダーとAWSが180度違う処。
そういった基調講演でやったような凄いシステムを、たった一人のエンジニアにもその場ですぐ使える。
なぜならば、個別の対応をしていなくて、全て同じソフトウェアで提供しているから。
これが、なかなか理解されなかったけど、この手法によって、多くの事例が事例を呼ぶ事となります。そういった事例がまた参考になるわけです。
同じサービスで作られているから。大きく流れが変わってきたのはそれが理解されてきたからじゃないだと思いますね。

高橋
永らくIT業界で倣わされてきた40年、50年のビジネスの仕方が、Amazonという1社の思想とか考え方によって変革されてしまった。
最初は孤立していたんだろうけど、初めて成果を出して以降、70回の値下げをしているというのも重要なトラックレコードであると思うのです。
有言実行なんですよね。自分たち(Amazon)に任せてもらえれば、規模も働くしテクノロジーもアップデートされる。そして、値下げが出来ます。と、言ったとおりに値下げしている。
頼まれてもいないのにもう6年か7年の間、1年間に10回も値下げするっていうことをやってきたために、ユーザーの熱烈な信頼を得てきた…それを渥美さんが初め(第2回)から見ているというのが凄いですね。

渥美
ホントにそうかなっていうのはありますが、あはは(笑)。
でも、最初の頃は、クラウドを提案した時に、お客様に「クラウドをそれだけみんなが使うようになると値上げをするんじゃないか?」というリスクについて、散々言われました。
しかし今、「Amazonはこの10年間で徹底的に値上げをしていない。」という前提があり、これを不安に思うお客様は最近いなくなってきました。

高橋
うーん、(値下げを)70回しているんですものねぇ。

渥美
何故、こんなに値下げが出来るかというと、やっぱり徹底的にソフトウェアの可能性を信じているからだと思います。
今はGEや日本のIT企業も皆、ソフトウェアカンパニーになると言っているわけです。
製造業も金融業もそうですけど、一番付加価値を高められる可能性を持つものは、ハードウェアの進歩ももちろんですが…今は、ソフトウェアの革新的技術っていうものが世の中の生産性、そして新しい価値を生み出している。
それを最初からやっているのはクラウド事業者だと思うんですよね。

注.1:元アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSJ)の小島英揮氏。


次回
第4章『AWSのパートナービジネスって?』

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