2017年よりスカイアーチ顧問に就任された元AWSエバンジェリスト、渥美俊英さんに、
スカイアーチ専務の高橋が、これからのクラウド業界について、
さらには、なぜスカイアーチの顧問を引き受けていただいたのか、
改めてお話をおうかがいしました。
ロングインタビューになりましたので、第1章~6章に分けて、ご紹介させて頂きます。
第1章
『ITとのかかわりと今後のクラウド業界』
高橋(スカイアーチネットワークス 専務取締役)
今回のインタビューは、スカイアーチ顧問に就任して頂いた渥美さんに、元AWSエバンジェリストという視点からも、AWSのこれまでと今後についてお話をお聞きして「今の渥美さんに話を聞いたら、こんな話が聞けたよ!」っていう鮮度の高い話を情報発信していければと思います。
渥美(スカイアーチネットワークス 顧問)
今までインフラ中心のキャリアのエンジニアにも関心と自信を持ってもらえると良いですね。AWS SummitなどAWS界隈の最近の話題から、何故私がスカイアーチに関心を持ったか。昔のITの道を紐解きながら、これから盛り上がろうとしている金融について。脈絡的に言うとITの民主化とSummitに関わりますけど、大手ばかりではなくクラウドで若い会社も絶対に貢献できるという話。クラウドに関わるこれからのエンジニア像についてお話をしましょうか。
高橋
なるほど、では
・これまでの渥美さんのITとの関わりについて
・これからのクラウド業界について
・クラウドに関わるエンジニアとは
みたいな感じでお話を伺えたらと思いますけど、お願いできますか?
渥美
それでは、まずは私の自己紹介ですね?話に厚みを持たせないといけないので。(笑)
渥美俊英 Atsumi Toshihide
スカイアーチネットワークス 顧問
83年筑波大学卒業後、電通国際情報サービス(ISID)というシステムインテグレーター企業に33年勤務。 定年退職後2015年7月から1年間、アマゾン ウェブ サービス(AWS) ジャパン エンタープライズ エバンジェリストに就任、AWSクラウドのエンタープライズ利用の推進活動に従事。
ISIDでは、インターネットバンキングなど金融向けシステム開発を経て、2009年からAWSにいち早く着目し、クラウドエバンジェリストとして社内外でクラウド推進の活動に注力。
金融機関向けAWS対応セキュリティリファレンス、経産省クラウドセキュリティガイドライン活用ガイドなどの策定メンバー、クラウドの技術、セキュリティ、ガバナンスに詳しい。
コミュニティ活動でも知られている。
・一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) 運営委員
・特定非営利活動法人 日本セキュリティ監査協会(JASA)
※JASA - クラウドセキュリティ推進協議会 (JCISPA) アドバイザー
・FinTech協会会員
・翔泳社刊「デベロッパーのキャリアと働き方を語ろう vol.2」に対談集
渥美
私のこれまでのITとの関わりについて話しましょうか。
私が大学を出て新卒で就職した時代(1983年)というのは、コンピューターというものは汎用機(注.1)しかない様な、今とは全然違う時代でした。
私が入社した「ISID(注:2)」という企業はその中でも革新的なサービスを始めた企業でした。GE(注.3)のもっている大型コンピュータのセンターをユーザが遠隔地からコンピュータをもつことなく端末で利用する…という様な、今でいうクラウドそのもののようなサービスを提供する会社でした。親会社の電通は広告でネットワークということを使い出した面白い会社でしたが、ISIDはまだ凄く小さい会社で一体何の会社かわからないそんな会社でした。
そのころから汎用機に対抗するかの様に、遠隔地の今でいうクラウドのようなサービスが出現しはじめました。
80年代後半から、コンピュータは10年単位でトレンドが変わってきており、私はそれを目の当たりにしてきました。
汎用機に対するミニコンという時代があって、次はオフコンに対するWindowsNT、その後、Linux(オープンソース)が登場します。そんな時代の移り変わりを、私は新しいソリューションでお客様に展開してきました。
WindowsNTで金融向けに初めてWebサービスを提供する。Javaで金融機関に初めて重要なシステム(インターネットバンキング)を提供する、など…新しいシステムをワクワクしながら提供してきました。そうして直近、この5~6年は、クラウドが大きくIT業界を変えるするものだと確信し、全力で注力してきました。
クラウドについては2010年ころ…まだクラウド黎明期ですが、大きく世の中を変えるものだと確信して、以来クラウドのエバンジェリストを担ってきています。
自分がWindowsNTやJavaで経験したように、金融でクラウドを使えたら良い、それが一番ドライビングフォースになるだろう、世の中を変えていく力になるだろうと思い、2012年 第一回AWS Summitで金融機関向けにAWSが十分に使えるということを知らしめるため、セキュリティリファレンスをボランティアで無料で公開しました。
高橋
では今後、この5~6年でクラウド業界の動きはどうなっていくでしょうか?
渥美
AWS Summitは今年で6年目ですが、例年AWSサミットで語られたものというのは、このクラウド業界の数年の動きを示していると言えます。
第1回目の当初はエンタープライズでのAWS利用はこれから、という感じ、2回目は・・・ちょこちょこっとエンタープライズ関連の話が出始め、2014年にはソニー銀行がAWSを使って業務系を始めました。2015年にはファーストリテイリング(注.4)が、クラウドネイティブな仕組みを使って、ビジネスを数倍に広げることをクラウドで実現するという講演がありました。AWSはこの2年ほどでエンタープライズ企業向けの利用が急増しています。そんな中、今年のAWS Summit最大の話題は三菱東京UFJ銀行(MUFG)がAWSを本格的に業務で使うということが大きなインパクトになったと思います。
三菱東京UFJ銀行は、5年間で数百のシステムをAWSに全面的に移行して、100億円のコストダウンを図る、さらに今までにないFintech(注.5)を初めてとして、今まで1~2年かかっていたサービスのリリースを数か月で展開していくということを話しています。
このようなクラウドの現状の中で、オンプレ(注.6)からクラウドへ全面的に移行するというユーザーもいれば、ハイブリッド(注.7)というお客様など…お客様がクラウド前提でシステム利用を考えていくという事が、大きな流れになってきています。
注.1:大手企業などの巨大な組織の基幹業務用などに使用される、大型コンピュータを指す用語。汎用コンピュータ、汎用機、大型汎用計算機。
注.2:株式会社電通国際情報サービス。電通グループのシステムインテグレーター。
注.3:ゼネラル・エレクトリック。アメリカ合衆国コネチカット州に本社を置く、多国籍コングロマリット企業。
注.4:株式会社ユニクロなどの衣料品会社を傘下にもつ持株会社。
注.5:金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語。ファイナンス・テクノロジーの略。
注.6:オンプレミス。サーバなどの情報システムを使用者(企業)が管理する設備内に設置し、運用する事。自社運用。
注.7:オンプレミスとクラウド、クラウドとクラウドなどを組み合わせたシステムの運用形態。
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