はじめに
新年明けましておめでとうございます!
新年の幕開けとともに、クラウドコンピューティングの最新トレンドについてお伝えしたいと思います。
本記事では、AWS Gravitonについて触れ、クラウドサービス利用費削減につながる話をしたいと思います。
目次
Gravitonの誕生~躍進について
Gravitonは、AWSが12年前から取り組んできたARMベースのカスタムプロセッサーです。
2018年に初めて発表されて以来、Graviton 4に至るまで、着実に性能を向上させてきました。
特筆すべきは、マイクロベンチマークだけでなく、実際のワークロードを参考にパフォーマンスをチューニングしてきた点です。
その成果は数字に表れており、過去2年間で、データセンターの新規CPU容量の50%以上がAWS Gravitonによって占められているとの事でした。
Aurora、DynamoDB、Redshiftなどの主要サービスでも、Gravitonの恩恵を受けており、Amazon Prime Dayでは25万以上のGraviton CPUが運用を支えたとのことでした。
3大クラウド事業者がCPUメーカーに
3大クラウド事業者は、自社製CPUの利用を本格的に始めています。
AWSは、EC2の効率化のために手がけたNitroから始まり、Graviton、Inferentia、Trainiumなど、独自のハードウェアチップを先んじて開発してきました。
どちらのアーキテクチャが優れているという話ではなく、各社がより高性能で効率的なシステムへの再構築に本腰を入れ成果が出ています。
Amazon Web Services | Microsoft Azure | Google Cloud | |
---|---|---|---|
ARM プロセッサ | Graviton 2018~ | Azure Cobalt 2023~ | Google Axion 2024~ |
AIアクセラレータ | Inferentia 2018~ Trainium 2021~ |
Azure Maia 2023~ | Tensor Processing Unit 2017~ |
※各クラウドサービス上で利用できるようになった年号を記載
代表的なサービスのGravitonへの移行工数・メリットについて
サービス | 移行工数(所感) | メリット |
---|---|---|
Amazon EC2 | 大 | 最大40%のコストパフォーマンス改善 |
AWS Lambda | 小〜 | パフォーマンス19%向上、コスト20%削減 |
AWS Lambda +Layer | 中〜 | 上記同様 ※コスト削減幅が小さい事が多い点に注意 |
AWS Fargate | 中〜 | パフォーマンス40%向上、コスト20%削減 |
AWS EKS | 中〜 | パフォーマンス40%向上、コスト20%削減 |
Amazon Aurora | 小 | パフォーマンス20%向上、コスト20%削減 |
Amazon RDS | 小 | パフォーマンス35%向上、コスト20%削減 |
Amazon ElastiCache | 小 | パフォーマンス45%向上、コスト20%削減 |
※サービス/メリットについて下記よりピックアップ
AWS Graviton Fast Start でイノベーションを加速する
※パフォーマンス向上幅については同等の x86 ベースよりも最大で
費用削減だけの観点となると、RI(リザーブドインスタンス)/SavingPlans が第一候補となると思いますが、費用削減に加え性能アップの可能性、持続可能性への取り組みも考慮すると検討の価値があります。
特に DB、KVS等であれば、AWS側の保守範囲となるため、まずはこれらのサービスでGravitonの利用検討される事が良いと考えています。
注意点
コンピューティングサービスの場合、パイプライン有無にもよりますが、アプリケーション/利用ライブラリに移行難易度が依存すると考えます。
動作させているアプリケーションの動作要件を満たす事ができるか、対応ライブラリ・パッケージ等が提供されているか、修正版が即座に提供されるかといった、保守性も慎重に考慮する必要があります。
Well-Architected持続性の柱
AWS Well-Architectedの持続可能性の柱、SUS05 章に注目すると下記が推奨されています。
- 適切なサイジング(のためのモニタリング)
- 適切なインスタンスタイプの利用、及びアーキテクチャの選定
- マネージドサービスの利用
SUS 5 アーキテクチャでクラウドのハードウェアとサービスをどのように選択して、持続可能性目標を達成しますか?
Compute Optimizer
Compute Optimizerを活用することで、Gravitonへの移行に伴うコスト削減とパフォーマンスへの影響を事前に評価できます。
AWS Graviton ベースのインスタンスのレコメンデーション
まとめ
Gravitonの進化を始め、クラウドプロバイダーのハードウェア戦略は、今後のクラウドコンピューティングの方向性を大きく変えつつあります。
コスト、パフォーマンス、持続可能性の観点から、Gravitonへの移行を真剣に検討する時期になってきたと感じました。
個人的には数年前から身の回りがほぼARMアーキテクチャデバイスなのですが、サーバではまだ少し早いかなと考えていました。
が、ここ数年の動きを見ていると、逆にx86のみにこだわることがリスクになっていくのだろうなと感じた事が衝撃的でした。
自社内では、CI/CDありのサーバレス・コンテナ環境ではGraviton利用例がありますが、今後はDB系サービスは特に積極採用していく。
お客さまにもメリット・デメリットをお伝えし、採用頂くことが新年の一つの目標となりました。
参考動画 re:Invent 2024 Keynote - Monday Night Live
Graviton誕生-躍進について、カスタムチップを作る・投資するということが全く不明瞭だった最初期の話から始まり、AWS最初のカスタムチップであるNitroを含んだハードウェア全体の話、その後のAI推論・強化学習チップへの繋がり、と何度も見返してしまいます。
ぜひご覧ください。