AWS活用には認定資格取得が一番の近道? 資格の全体像と学習方法大解剖 – 後編

 本記事の前編ではAWSの資格の有用性や取得するメリットについてお伝えしていきました。https://www.skyarch.net/column/aws%e6%b4%bb%e7%94%a8%e3%81%ab%e3%81%af%e8%aa%8d%e5%ae%9a%e8%b3%87%e6%a0%bc%e5%8f%96%e5%be%97%e3%81%8c%e4%b8%80%e7%95%aa%e3%81%ae%e8%bf%91%e9%81%93%ef%bc%9f%e3%80%80%e8%b3%87%e6%a0%bc%e3%81%ae/

後編では11種類ある資格の難易度やそれぞれカバーする知識領域についてお伝えしていきます。どんな資格があるのかを知っていただき、受験の参考にしていただければ幸いです。

AWS認定資格の種類と難易度

AWS認定試験はどのような種類があり、それぞれどの程度の難易度なのでしょうか。

以下の段落で2021年12月現在の資格を総ざらいしていきます。

AWS認定資格は11種類

 AWS認定資格は2021年12月現在、全部で11種類存在しています。昨年、一時12種類に増えたこともありましたが、AWS認定資格の種類はAWSのサービスの多様化やITの流行にあわせて増減することがあります。内容は、入門、アソシエイトレベル、プロフェッショナルレベル、専門知識など、難易度や分野に分かれています。

 それぞれどのような資格なのかを解説していきます。

1種類の入門的な資格

 入門的な資格として『AWS 認定クラウドプラクティショナー』があります。

AWSのそれぞれのサービスが、大まかにどのような機能を持っているかの理解が問われます。問題文も長くなく、難易度も一番低いので入門試験として最適です。受験料は11,000円(税抜)です。

 かつて有料の模擬試験がありましたが現在では廃止され、AWS Certification Official Practice Question Setsという無料の練習問題集が公開されています。

3種類のアソシエイト資格

 次に、アソシエイトレベルの試験が3つあります。

  1. AWS認定ソリューションアーキテクト – アソシエイト
  2. AWS認定 SysOps アドミニストレーター – アソシエイト
  3. AWS認定 デベロッパー – アソシエイト

 いずれも実務経験が1年以上ある担当者を想定して試験問題が作成されていますが、実務経験がなくても受験は可能です。

 受験料は15,000円(税抜)です。また、アソシエイト試験はすべて練習問題集が用意されています。下記でそれぞれの内容についてもう少し詳しく見ていきましょう。

1. AWS認定ソリューションアーキテクト – アソシエイト

 可用性やコスト効率といった、システム設計に関する能力を問われます。

AWS認定試験の中では、参考書も最も多く出版されており、取り掛かりやすいやすい資格であると考えられます。なお、試験は2020年3月に新しくバージョンアップされており、参考書などで学習する場合は、新バージョンに対応している教材であるか確認が必要です。

2. AWS認定 SysOps アドミニストレーター – アソシエイト

 アカウント管理、セキュリティや自動化といった、AWSの運用に関する能力を問われます。かなり幅広い範囲で出題され、システム管理者向けの試験となっております。なお、この試験も2021年7月に新しくバージョンアップされており、従来の選択式問題だけでなく、AWS認定資格初のラボ環境を用いるような、より実践的な試験になっています。

3. AWS認定 デベロッパー – アソシエイト

 デプロイ、デバッグ、サーバレスフレームワークなどの構築に関する知識も出題され、AWS上のアプリケーション開発の能力が問われます。AWS上でアプリケーションを開発した経験がある方であれば非常に受かりやすい試験であると考えられます。

2種類のプロフェッショナル資格

 アソシエイトレベルの試験よりも上の段階として、プロフェッショナル試験が用意されています。2021年12月現在、以下の2種類が用意されています。

  1. AWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナル
  2. AWS認定 DevOps エンジニア – プロフェッショナル

 いずれも実務経験が2年以上ある担当者を想定して試験問題が作成されています。

 こちらも実務経験がなくても受験は可能です。また、かつてはアソシエイトレベルのAWS認定資格を持っていることが受験の前提条件でしたが、現在は前提条件が撤廃されています。

 受験料は30,000円(税抜)です。プロフェッショナル試験はすべて模擬試験が用意されています。

 アソシエイトレベルとプロフェッショナルレベルの試験の違いは、試験範囲の広さや難易度です。

 アソシエイトレベルの試験は問題文が長くて5行程度ですが、プロフェッショナルレベルの試験は問題文が10行ほどにわたる場合もあります。また、選択肢の長さも長いうえに75問を180分で解かなくてはいけないため、試験時間も非常にぎりぎりになってきます。

加えて、試験に向けた学習を行う上でも困難が伴います。

 このように難易度が上がることに加え、ソリューションアーキテクトプロフェッショナルについての教材は他の認定に比べ、数が限られています。

 そんなプロフェッショナルレベルの試験の内容について、記載していきます。

1. AWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナル

 AWS認定ソリューションアーキテクト – アソシエイトの上位として位置づけられている試験です。可用性やコストに加え、大規模なシステムの移行や、オンプレミスとパブリッククラウドの接続といった知識を問われます。

 問題文や選択肢が非常に長く、出題されるAWSのサービスの範囲も非常に広いのが特徴です。

2. AWS認定 DevOps エンジニア – プロフェッショナル

 AWS認定 SysOps アドミニストレーター – アソシエイトおよび、AWS認定 デベロッパー – アソシエイトの上位として位置づけられている試験です。デプロイ、デバッグ、CICDによる継続的なリリース、組織のガバナンス、セキュリティといった幅広い内容の知識を問われます。

 試験の特徴としては、AWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナルほど問題文や選択肢は長くないですが、実際のコードやJSONファイルが出題されるなど、運用と開発の両方を経験していないと合格が厳しい内容になっています。

5種類の専門資格

 アソシエイトレベルおよびプロフェショナルレベルの試験とは別に、専門性に関する試験が用意されています。2021年12月現在、以下の5種類が用意されています。

  1. AWS認定高度なネットワーキング – 専門知識
  2. AWS認定セキュリティ – 専門知識
  3. AWSデータ分析 – 専門知識(旧AWS認定ビッグデータ – 専門知識)
  4. AWS認定 機械学習 – 専門知識
  5. AWS認定データベース – 専門知識


 いずれもAWSでの実務経験が2年以上あり、かつ当該の分野で5年以上の経験がある担当者を想定して試験問題が作成されています。

こちらも実務経験がなくても受験は可能です。

 受験料は30,000円(税抜)です。なお、アソシエイトレベルとプロフェッショナルレベルの試験は練習問題集が用意されていますが、専門資格は1部のテストで練習問題集が用意されていません。

 アソシエイトレベルおよびプロフェショナルレベルの試験の違いは、AWSに関する知識以外に、当該の分野に関する深い知識も必要になってくる点です。アソシエイトレベルおよびプロフェショナルレベルでも、ITの基本的な知識は必要になりますが、専門資格では一層深い知識が求められます。

 例えばAWS認定高度なネットワーキング – 専門知識では、WANのルーティング技術であるBGPに関する知識がないと解けない問題が出題されますし、AWSデータ分析 – 専門知識の問題文はHiveやPrestoといった技術について知っておかないと問題文を理解できません。

したがって、受験に向けてはAWSの知識以外にも、一般的なセキュリティ、NW、機械学習、データ分析などの知識が必要になります。

 それではそれぞれどのような試験なのか、内容について記載していきます。

1. AWS認定高度なネットワーキング – 専門知識

 AWSのネットワークアーキテクチャに関する知識、オンプレミスとの接続、ネットワークセキュリティなどの知識が問われます。AWSの知識だけでなく、VPNやBGPといったネットワークの基本的な知識が問われます。

2. AWS認定セキュリティ – 専門知識

 暗号化やAWSのセキュリティサービスに関する知識が問われます。フォレンジックや最小権限の原則といった、セキュリティに関する基本的な知識をもって試験の準備を進めるといいでしょう。また、HTTPSやSSHといった、ネットワークに関する知識も必要です。

3. AWSデータ分析 – 専門知識(旧AWS認定ビッグデータ – 専門知識)

 データ分析に関する知識や、データの保管に関するコスト管理、セキュリティ等の知識が問われます。2020年4月にAWS認定ビッグデータ – 専門知識という試験の名前から変更になりました。

4. AWS認定 機械学習 – 専門知識

 AWSの機械学習関連サービスに関する知識を問われます。AWSの試験ガイドからダウンロードできるサンプル問題を見るとわかりますが、AWS色が非常に薄い試験となっています。また、サンプル問題の解説に論文がリンクされており、合格には機械学習に関する基本的な知識が必要であることがわかります。

5. AWS認定データベース – 専門知識

 AWSのデータベースサービスに関する知識が問われます。2020年4月にリリースされた新しい試験です。AWSはRDBSのほか、NoSQLやキャッシュサービスなど様々なデータベースサービスが提供されているため、それらのユースケースを理解しておく必要があります。

それぞれの難易度

 これまで11種類のAWS認定資格についてその特徴やカバーする領域をお伝えしてきましたが、それぞれの難易度はどのようなものなのでしょうか。

 難易度についてはそれぞれのエンジニアの経験に基づく得意、不得意にもよりますが、

AWSOME DAY VANCOUVER 2019などのAWS公式イベント等で言及があった内容を要約すると以下のようになります。

 ※AWS認定データベース – 専門知識は2020年4月にリリースされた試験であるため、言及しません。

  • 非常に簡単
    • AWS 認定クラウドプラクティショナー
  • 簡単
    • AWS認定 デベロッパー – アソシエイト
  • 標準的
    • AWS認定ソリューションアーキテクト – アソシエイト
    • AWS認定 SysOps アドミニストレーター – アソシエイト
  • 難しい
    • AWS認定セキュリティ – 専門知識
    • AWSデータ分析 – 専門知識
    • AWS認定 機械学習 – 専門知識
    • AWS認定 DevOps エンジニア – プロフェッショナル
  • 異次元に難しい
    • AWS認定高度なネットワーキング – 専門知識
    • AWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナル

 特にAWS認定高度なネットワーキング – 専門知識およびAWS認定ソリューションアーキテクト – プロフェッショナルについては問題文の長さや問われている知識の深さなど、非常に難易度が高く、試験時間もギリギリになる試験になっています。

AWS認定資格の勉強方法とは?

 これまで様々なAWS認定資格についてみていきましたが、資格取得に向けて、どのように準備を進めればいいのでしょうか。準備の進め方について記載していきますので参考にしてみてください。

まずは実戦

 AWSの試験では、これまで記載したとおり、実戦的な知識が問われることが多いです。

会社でAWS関連の案件があれば、可能な限り参画してみましょう。また、仕事でAWS関連の案件に従事しなくても、AWSの公式サイトで無料のトレーニングが用意されています。

『AWS 10分間チュートリアル』など無料でハンズオンできますので、試験に向けてやってみると有効です。

AWS認定試験用のアカウントを作成する

 当プログ AWS認定試験を受けるためにはアカウントの作成が必要です。AWS認定試験のサイトからアカウント作成を行います。メールアドレスがあれば作成が可能です。

AWSの公式資料を見る

 各試験において、公式の試験ガイドが用意されています。まずは受験しようとしている試験がどのような範囲で、どのような知識が問われるのかを知っておくことが非常に重要です。

 試験前に熟読しておくことをお勧めします。

公式のサービスガイドを見る

 AWS認定資格では、普段利用しないAWSサービスも出題されます。それらのサービスがどのようなサービスなのか知らないと、問題を解くことは難しいでしょう。

『AWS サービス別資料』と検索すると、AWSの各サービスがまとめられたスライドのリンク集を見ることができます。不明なサービスや、理解があいまいなサービスがあれば、試験前に見ておきましょう。

AWSの公式サンプル問題や練習問題集を解いてみる

 試験のサイトからサンプル問題のPDFファイルをダウンロードすることができます。

分かりやすい解説もついているので、勉強の着手には最適です。また「AWS Certification Official Practice Question Sets」という無料版練習問題集が公開されています。回答直後に不正解の理由を詳しく解説してくれますので、ぜひ試してみましょう。

合格体験記を見る

 AWS試験に向けて、過去の合格者がどのように準備したのか、どのような参考書を利用したのかなど、合格体験記を見て情報収集しておくと効率よく準備ができます。QiitaやClassMethod社のブログに合格体験記が記載されていますので、試験前にぜひ見ておきましょう。

公式/非公式のイベントに参加してみる

 AWS SummitやAWS InnovateといったAWSの公式イベントで試験対策の講演が行われることがあります。AWSの研修を行っている講師から、試験問題の解説や理解しておきたい事柄について説明があるなど、試験対策として非常に有用です。ぜひ参加してみましょう。

 また、AWSでは有料ですが公式の研修も行っています。受講料が20万円程度しますが、プロフェッショナルレベルの試験を受験する際には受験を検討するのもいいでしょう。

 非公式では有識者、経験者によるハンズオンイベントが開催されることもあります。Twitterや各種イベントサイトなどで情報収集を行い、非公式イベントに参加して経験を積むことも試験の準備としては重要です。

書籍を購入してみる

 AWS 認定クラウドプラクティショナーや、AWS認定ソリューションアーキテクト – アソシエイトについては試験合格に向けた日本語の参考書が販売されています。これらの試験を受験する方は、ぜひとも購入を検討してみてください。

 また、試験に限定した書籍でなくても、AWSのアーキテクチャパターンを学べる書籍は数多く出版されています。試験に向けて知識を補強することができますので、自身にあうものを1冊でも購入し、目を通しておくといいでしょう。

オンラインの参考書・練習問題を解いてみる

 以下に挙げるサイトでは解説動画や練習問題集が販売されています。練習問題は最多で500問程度記載されているものもありますので、力試しや問題演習として利用するには最適です。基本的に英語となりますが、Udemyは日本語でのコースがあることを確認しています。

  • Udemy
  • Whizlab
  • LinuxAcademy
  • CloudGuru

試験を申し込み、受験する

 AWS認定試験用のアカウントからを作成し、試験の申し込みをしましょう。テストセンターの空きがあればいつでもスケジューリングすることが可能です。このスケジュールは2回まで変更が可能です。ただし試験開始24時間前はスケジュールの変更が不可になり、試験開始48時間前はスケジュール変更が可能ですが変更料がかかります。

 なお、オンラインでの受験も可能です。ただし、PCのスペックを確認する必要があったり、テストを提供するベンダーによっては日本語が対応していないことがあったりと、注意が必要です。

 また、受験時には顔写真付きの身分証明書(免許証やパスポートなど)と、顔写真なしの身分証明書(健康保険証など)の2種類が必要です。とくに顔写真付きの身分証明書を忘れてしまうと受験は不可能で不合格扱いとなります。試験場に向かう前にダブルチェックを行いましょう。

まとめ

 AWSはじめとしたクラウドサービスは、ニーズの増加傾向から、今後エンジニアにとって避けては通れないツールとなっていくと予想されます。そのなかでもAWSはクラウドサービスシェア1位で、AWSの認定資格の重要性はますます増えていくことでしょう。

 AWS認定資格は非常に種類が多く、中には難易度が高いものもあります。しかしながら、取得に向けて勉強することはAWSの知識を得るために非常に有用です。また、資格を取得すると自身のステップアップや会社の利益につながります。 この記事を読んで興味がなかった、分からなかった方には受験を検討していただければ嬉しいです。また、すでに受験を検討されていた皆さんには参考となれば幸いです。
 十分な情報収集を行い、万全の対策で試験に備えてください。

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