AWSエンジニアの仕事と役割3選、専門性を追求する
AWS関連のプロジェクトでもっと仕事がしたい。今の会社には不満があるので自分のスキルを武器にして転職したい。求人が多い職種に就きたい。
フリーランスとして企業が求める人材になりたい。そんなAWSエンジニアの方はたくさんいらっしゃると思います。ただ、このAWS関連の仕事において今求められているのは、必要だけど特化したスキルを持つ人が見つからないというエリアの役割を即戦力として担うことができる人材なのです。
AWSに関連するプロジェクトに参加すると、AWSエンジニアとして働いている方々には本当に様々な役割の人がいることがわかります。スキルとしては、サーバー、ストレージ、ネットワーク系のハードウェア寄りの純粋なインフラが得意な人、OS周りに秀でた人、ミドルウェアに近いサービスや、アプリ系サービス中心の方もいます。プロジェクトのタイプやフェーズを問わず必要とされるプロジェクトマネージャーやバックオフィス系のPMOの業務に特化した人もいます。
そんな中で、今いろいろなプロジェクトで求められているのが、プロジェクトのタイプやフェーズによって必要となる、「導入設計」、「構築・マイグレーション」、「監視・運用保守」それぞれに特化したスキルを持つ人材です。このような人材は多くのプロジェクトで必要とされているにもかかわらず、サービス系スキルを持つエンジニアに比べると少なく、すぐに見つからないことが多いです。
ということは、このようなエリアこそ今目指すべきということになります。さらに、特化分野を突き詰めることによって後述するAWSコンピテンシーパートナーとして認められれば認知度は飛躍的に向上します。
この記事では、これらの3つの役割はそれぞれどんなことをするのか、どんなスキルが必要なのか、さらにどのようにその専門性を追求するのかということについて解説します。
AWSエンジニアの役割3選
まずは、AWSエンジニアの3つの役割、「導入設計」、「構築・マイグレーション」、「監視・運用保守」に関してその業務内容と求められるスキルに関して解説します。
導入設計
導入設計とは、その名の通りインフラやサービスの導入にあたっては必ず必要となる設計のことです。
どの段階から関わるかによって担当する部分は異なりますが、一般的には必要とされる機能を実現するために最適なサービスの組み合わせを選択し、必要に応じて外部のサービスも活用し新規システムの全体の設計図を作るのが役目です。それぞれのリソースのタイプ、大きさやコストも考慮する必要があります。
必要とされるスキルは広範囲に及びます。AWSサービスのスキルは当然として、それらの組み合わせを行うスキル、さらに総合的なアーキテクチャーやセキュリティのスキル、場合によっては一般的にオンプレで利用されてきたようなERPやクラスタリング、データベース系のスキルも必要になります。
構築・マイグレーション
導入設計に基づいてインフラやサービスの構築、データや機能の移行を行うのが役割です。場合によっては導入やマイグレーションを適切に行うために導入設計の一部を受け持つこともあります。
具体的には必要なサービスやソフトウェアのインストールと初期設定を行ないます。同時に現行システムからデータやプログラムを新しい環境に移しますが、この時には移行用のネットワークやNAS、プログラム間通信等の仕組みも構築する必要があります。このような作業を経て現行業務にできるだけ影響を与えずにユーザーが使用可能な状態にするのが大きな目的です。
必要とされるスキルはさまざまなサービスやソフトウェアの詳細な知識とインストレーションや初期設定のために特化したスキルも必要です。また、マイグレーションで使用する機能やネットワーク、さらにはデータベースマイグレーションのためのかなり突っ込んだスキルも必要です。
監視・運用保守
監視や運用保守に特化した役割です。構築された仕組みが問題なく稼働し、ユーザーにサービスを提供し続けるために必要な広範囲の作業があります。問題管理、インシデント管理、変更管理、構成管理、ヘルプデスク等の管理業務で成り立っています。
また、それらを支える監視機能やソフトウェアのアップデート、プログラム修正等の変更作業も含まれます。
必要とされるスキルは前述した管理業務全てに関わるものです。使用されているサービスやプロダクト、プログラムの機能、さらにネットワーク、仮想化、コンテナ運用に関する基本的なスキルはもちろん、管理系や監視のツールやオートメーションに関するスキルも必要です。
AWSエンジニアとして専門性を追求するには
ご紹介した3つの役割はAWSエンジニアだけではなく、全てのITエンジニアにとって最も基本的で、いろいろな場面で求められている重要なものです。これらの役割をある程度の期間担うと、頻繁に関わってきたサービスや製品が見つかります。
また、自分に向いている分野がわかってきます。そして、いろいろな場面で特に役に立つような専門的なスキルや知識があることにも気づくはずです。そして、それらの中から特に追求して行きたいと思える得意分野を絞ります。
その得意分野のスキルや知識を自分の本当の強みにするためには専門性を追求が必要です。3つの役割を実務上で、またAWSトレーニングや外部のトレーニング、それらの専門的なスキルを深く、また最新のものにしていく事によって、さらに求められる人材になることができます。
このような専門性の追求の中で指標となり、ビジネスに直結する宣伝ともなり、また今後の方針を決める上でも役に立つのがAWSコンピテンシープログラムです。
AWSコンピテンシープログラムはAWSに関する技術的な専門知識とカスタマーサクセスを実証したパートナーをコンピテンシーごとに特定、検証、および推奨するためのプログラムとして位置づけられています。
AWSコンピテンシープログラムを活用する
コンピテンシーとはどういう意味でしょうか?
日本においては、特に人材開発のエリアで多く用いられる言葉で、「優秀な成果を出す人に共通する行動様式で、知識やスキルとは違う」と定義されることが多いようです。これは、アメリカで使用されているコンピテンシーの意味とは微妙に違います。
元々のコンピテンシーとは「物事を成功に導く全ての能力」という意味で用いられることが多く、この意味では行動も、知識も、スキルもその人が持っているものはすべて含まれます。Amazonもアメリカの会社なので、AWSコンピテンシープログラムというときのコンピテンシーも本来の意味です。
つまり、AWS のサービスを利用したビジネス活動が成功するための固有の能力を持っている人や団体を育てたり、認めたりするのがAWSコンピテンシープログラムということになります。そして、このプログラムによって認定されるのがAWSコンピテンシーパートナーです。
それでは、AWSコンピテンシープログラムに関して、もう少し詳しく見てみましょう。コンピテンシープログラムでは3つのタイプのコンピテンシーが定義されています。「業種」、「ユースケース」、「ワークロード」です。
「業種」とはその名の通り、特定の業種に特化したサービスやソフトウェア製品を提供できるコンピテンシーです。金融、教育、政府機関、ヘルスケア、小売業、産業ソフトウェア、ライフサイエンス、非営利団体、公共安全および災害対策、旅行と接客のコンピテンシーがあります。
「ユースケース」とは、オブジェクト指向の開発技法などに関連してUMLの中で見ることが多かった言葉ですが、ここでの意味はそれとは違います。
元々の英語の意味は「使用事例」が一般的で、そこから派生し、「その事例で使用されている物」という意味にとなります。ここでは特に「使用されている技術」という意味で使われています。クラウド管理ツール、コンテナ、データと分析、DevOps、デジタルカスタマーエクスペリエンス、デジタルワークプレース、ハイパフォーマンスコンピューティング、IoT、機械学習、メインフレームの移行、移行、モバイル、ネットワーク、セキュリティ、ストレージのコンピテンシーがあります。
「ワークロード」ですが、これも意味を間違えやすい言葉です。プロジェクトマネージャの世界では、ワークロードといえばほぼ「人月」で現される作業工数のことを言いますが、ここでの意味は「あるプロセスや仕事をサポートするIT資産の集合」のことです。他にもIBM、Microsoft等のアメリカ起源の企業はこの意味でワークロードという言葉を使用することが多くなっています。Microsoftのワークロード、Oracle、SaaS、SAPのコンピテンシーがあります。
パートナーがコンピテンシーを追求するパスとしてはまず、パートナーがISVかコンサルタントどちらかの要件を満たすことで、ここまでご紹介したようなコンピテンシーの中から狙うべきものを特定し、コンピテンシー認定の申し込みを行います。そして、AWSコンピテンシー認定を受けると、AWSコンピテンシーパートナーとして、ビジネスを宣伝するためのさまざまな Go-To-Marketアクティビティを利用することができます。
AWS エンジニアの役割とコンピテンシー
それではAWSエンジニアの3つの役割ごとに、獲得すべきコンピテンシーの例をご紹介しましょう。
導入設計
導入設計において有効なコンピテンシーとして挙げられるのは、主に「ユースケース」と「ワークロード」の2つのタイプです。
今後需要が大きくなりそうなものとしては「ユースケース」ではコンテナ、データと分析、モバイル、デジタルワークプレースなどがありますが、どんなプロジェクトでも常に必要なものとしてセキュリティやネットワークも専門性を発揮するには有効なので狙いどころです。
「ワークロード」ではSaaSが有望ですが、現時点ではユーザーや扱うプロジェクトが多いMicrosoftやSAPも重要なコンピテンシーとなります。
構築・マイグレーション
構築・マイグレーションにおいて有効なコンピテンシーはなんといってもメインフレームの移行です。
特にメインフレームの移行に関しては現在ではスキルのある人材が少なく、サービスやサポートするソフトウェアも限られているのが現状なので、このコンピテンシーでの新しい機能やサービスの開発はかなり有効です。
「ワークロード」の全てのコンピテンシーは構築やマイグレーションの方法や計画には必須なので、どれも多くの需要があります。「業種」の中から得意な業種のコンピテンシーを選べば、移行方法や構築方法などで業種固有のやり方を反映させることができます。
監視・運用保守
運用の中で有効なのは「ユースケース」が中心となります。クラウド管理ツール、DevOps、デジタルカスタマーエクスペリエンス、ハイパフォーマンスコンピューティング、機械学習、ネットワーク、セキュリティ、ストレージなどこれからもさらに需要が大きくなってゆく可能性があるコンピテンシーがたくさんあります。
また「ワークロード」のMicrosoft、Oracle、SAPに関してはそれぞれ独自の様々な運用ツールが提供されているのでそれに関連したサービスや製品も必要とされており、コンピテンシーとしての幅も広くなります。これらを組み合わせたオートメーションのようなコンピテンシーも有効でしょう。
また、「業種」によっては運用方法や方針に大きな違いがあり、特に金融のような業種ではその要件に合致した運用方法が必須となるので、これらのコンピテンシーも有用です。
おわりに
これまで解説してきたように、AWSエンジニアとして活動する上で専門性の追求は極めて重要です。専門性の追求無くしては知識やスキルの活用もできません。
それは、お客様を成功に導くためのコンピテンシーを獲得することであり、必要とされるサービスを提供できるパートナーとしてビジネスに貢献する事につながると同時に、あなた自身にも無くてはならない人材として認識してもらえるようになれます。AWSパートナープログラムを活用することはそのゴールへの近道と言えるでしょう。
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