AWS認定ソリューションアーキテクトとは?AWSエンジニアになろう
AWSのサービスを利用してビジネスを行なっていると、実にさまざまな立場や役割の人がいることに驚かされます。そんな中、新しいプロジェクトに参加するにあたっては、必要とされる役割にふさわしいスキルを持っているという証明が必要になります。
そのためには、今まで関わってきたプロジェクトの概要や自分が何をどのように行なってどのような結果になったかを一つ一つ説明する必要があります。
しかし、その中でいくら実績を主張しても、それを証明するのは実際には困難でしょう。そんな状況において個々の人物のスキルを客観的な事実で裏打ちするための制度がAWS認定制度です。これによって、AWS関連業務における自分のスキルと何ができるのかを1行で説明することができます。そういう意味では必ずメリットになります。
そんなAWS認定資格のなかで、最も取得が困難ですが、最も有用と思われる認定資格としてのソリューションアーキテクトに関して詳しい内容をご紹介します。
AWS認定制度とは
AWS認定制度とはどういうものか、認定にはどのようなものがあるのかに関しましては、すでに別記事で詳しくご説明していますので、そちらを参照いただきたいのですが、ここでは補足としてAWS認定制度の体系的なご説明をしておきます。どの資格を目指すべきか悩んでいらっしゃる方には参照していただけるでしょう。
まずは下記の図を見てください。
AWSの認定制度は大きく分けると、総合的な技術スキルを基本からプロレベルまで突き詰めてゆく左側の体系と、ネットワーク、データベース、セキュリティ等、個々の深い専門知識を問われる右側の体系に分けられますが、今回ご紹介するソリューションアーキテクトは左側の体系に属します。
この系統で全ての基本となるのはクラウドプラクティショナーであり、そこからさらにアーキテクト、運用、デベロッパーの3つの役割ごとにそれぞれ別の認定になっています。クラウドプラクティショナーは基礎コースとして定義されていますが、ソリューションアーキテクト認定の前提ではありません。
それではそのアーキテクトの認定であるソリューションアーキテクトとは何かに関してご説明します。
AWS認定ソリューションアーキテクトとは?
前述のように、ソリューションアーキテクトは、AWSの総合的な技術スキルの体系の中で特にアーキテクトとしてのスキルを認定する資格です。それではアーキテクトとは何でしょうか?
もともとアーキテクトというのは建築家のことを指します。例えば家を建てるとき、寝室は3つ欲しい、水回りは広く、リビングには暖炉を、さらにバリアフリーにしたいというような要求を個々に判断しながら個別の部屋を設計し、まとめるのではなく、全ての要求を総合的に判断し、さらに建築方法や工程、コスト等の全ての要因を判断した上で設計に落とし込むのが建築家の役割です。
同じようにIT業界でいうアーキテクトも同じで、ユーザーの要求をそのまま個別に実現するのではなく、総合的に考えてどうするのが一番良いかを考慮して判断することを求められます。そのためには広範で詳細な専門知識が必要になります。
アーキテクトの中でもソリューションアーキテクトとは、ソリューション、すなわち課題の解決方法を総合的な判断を行なうことによって提示できる人のことです。AWS認定において、ソリューションアーキテクトはAWSサービスの知識だけではなく、IT業界の一般的で広範な知識も持ち合わせている必要があります。
ソリューションアーキテクトの認定制度では、ベーシックレベルのアソシエイトとより高度なスキルを要求されるプロフェッショナルの2つのレベルがあります。
AWS認定ソリューションアーキテクト アソシエイト試験
それでは、アーキテクト認定の最初の関門であるAWS認定ソリューションアーキテクトのアソシエイトレベルの試験はどんなものでしょうか。
AWSの説明によれば、ソリューションアーキテクトアソシエイトの試験で求められるのは「AWS テクノロジーを使って安全で安定したアプリケーションの設計およびデプロイ方法に関する知識を効果的に実証できるかどうか」と定義されています。
つまりアソシエイトの試験の中心はAWSサービスの知識がメインということになります。これに対してプロフェッショナルレベルではもっと広範なAWS以外の業界の知識も必要になります。
試験は試験会場に行くか、自宅等でオンラインでも受験することができます。PCを利用した選択式で時間は130分で全65問1000点満点のうち720点で合格となります。
主題されるエリアとしては以下のように分野によって重み付けがされています。
- レジリエントアーキテクチャの設計:30%
- 高パフォーマンスアーキテクチャの設計:28%
- セキュアなアプリケーションとアーキテクチャの設計:24%
- コスト最適化アーキテクチャの設計:18%
AWS発行の試験ガイドによれば、試験では以下のような項目が問われます。
- AWS上で使用可能な、コスト効率が高く、フォールトトレラントでスケーラブルな分散システムの設計
- コンピューティング、ネットワーキング、ストレージ、およびデータベース関連のAWSサービス
- AWSのデプロイメントおよび管理サービス
- AWSベースのアプリケーションの技術要件
- 特定の技術要件を満たすAWSサービス
- AWSプラットフォーム上に安全で信頼性の高いアプリケーションを構築するために推奨されているベストプラクティス
- AWSクラウドで構築される基本的なアーキテクチャ原則
- AWS グローバルインフラストラクチャ
- AWSに関連するネットワークテクノロジー
- AWSが提供するセキュリティ機能とツール、および従来のサービスとの関連
試験サンプルとしては以下のような問題が公開されています。
- 会社の年末年始休暇中に実行不要となるAmazon EC2インスタンスのコストを節約する方法としてサーバーのシャットダウンと再開の 最適なアプローチに関して問われる問題です。
A.インスタンスストアボリュームにデータを格納するようにアプリケーションを変更する
B.インスタンスを停止する前に、インスタンスのスナップショットを作成し、インスタンスの再起動後にスナップショットを復元する
C.休止状態が有効である設定のインスタンスで休止状態にする
正解はC.です。
- 企業はアクセスログを5年間維持する必要があり、一度保存されたデータにアクセスすることはほとんどないが、必要な時には1日でアクセス可能にする必要があるという要件がある場合のコスト効率の高いストレージサービスは何かを問われる問題です。
A.S3標準ストレージからS3 Glacierに移行するC
B.loudWatch ログを使用してログとして保存する
C.S3 Glacier ディープアーカイブストレージに保存する
正解はC.で、この方法が要件を満たすサービスとしては最も廉価というものです。
試験の内容としてはある程度広範囲にわたっており、単一のサービスのソリューションに関して問われるケースが多い傾向はありますが、複数を組み合わせるようなソリューションに関しても対応できるようにしておく必要はあるでしょう。
難易度としては、少なくとも1年以上のAWSのサービス利用経験に加えて、利用していないサービスや体系的な知識もある程度必要になると考えられますので、合格のためにはハンズオンでの実地訓練と、AWSのオンライントレーニングを組み合わせて行うのが良いでしょう。
もう一段高いレベルの認定であるソリューションアーキテクト プロフェッショナルの試験に関しても補足情報として説明しておきましょう。
試験の形式としてはアソシエイトと同様ですが、時間は180分で設問は75問になっています。内容としては、アソシエイトとは比べ物にならないくらいの難易度であり、かなりの経験と試験のためのトレーニングを必要とするでしょう。
おわりに
ここまで述べてきたように、AWSに関係するビジネスに携わるエンジニアにとって、AWS認定を取得することは大きなメリットがあります。特に総合的なスキルがあることを証明するソリューションアーキテクトは最も有用で今最も求められている資格であると言えるでしょう。
しかし、その取得のためにはそれなりの実務経験と関連するトレーニングの受講等の対策が必要です。
取得を目指す方は、AWSのガイドにしたがってトレーニングをスタートするとともに、無料枠を活用して基本となるAWSサービスを試用して、さまざまなテストを行いながら認定試験の準備を行いましょう。