社内のエンジニアに代わるリソースとしてのMSPとは?

社内のエンジニアに代わるリソースとしてのMSPとは?

情報システム部を持たない中小企業のサーバー運用は、総務担当者が片手間でやったりしていないでしょうか。また、Webサービス系のサーバー運用は、社内エンジニアが片手間でやったりしていないでしょうか?

クラウドサーバーサービスが提供される10年程前までは、データセンターに設置した物理サーバーをベースとしてサーバーシステムは構築されていました。そして、仮想サーバーベースに置き換えられ、さらに現在では便利なパブリッククラウドに移行が加速しております。
しかし、昨今では世の中の要求レベルが高くなり、安定運用に向けた監視対応・セキュリティ対応・データー保全など、今までにない高いレベルに移行してきております。

このような環境において、運用をMSP(マネージドサービスプロバイダー)にアウトソースをする事が注目されていますが、皆様はMSPに関してどのような印象をお持ちでしょうか。

今回は、「MSPとは何か?」というところから、
そして、その内容や利用する事による恩恵に関して知っておくべき内容をまとめてみました。

MSPとは?

MSP(マネージドサービスプロバイダー)とは文字通り「管理されたサービスを提供」する。1998年頃?から使われ始めた言葉であり、主にオンプレミス環境等での運用管理業務を提供するサービスの事が指されていました。管理対象範囲は、データーセンター、ネットワーク、サーバー機材、OS、ミドルウェア運用、監視サービス、セキュリティ対策、バックアップ管理など多岐に渡っております。

これら全てを管理するには何名の人員が必要でしょうか?
夜間の監視なども含めて何人必要か想像してみてください。

しかし、最近では、オンプレミス環境のように物理サーバーありきで現地作業が必要な環境から、物理環境の管理が必要の無い、物理環境の運用管理業務が必要無いクラウドサービスを利用すれば、Webのコントロールパネルから簡単にサーバーを利用開始する事が可能です。

それを利用すれば管理負担が減るんではないの?
と感じると思います。
しかし、クラウドサービスは、急激に進化をしており片手間の知識で運用するのは、設計や運用においての重要なポイントの抜けが出る事もありえ危険を伴います。

そのような中、クラウドサービスを効率的に安全に利用できるよう専門的に請け負う事業者が現れており、それらの会社はMSP(マネージドサービスプロバイダー)と呼ばれています。

社内エンジニアの抱える課題とは?

現在の社内エンジニア・担当者は多くの課題を抱えています。ここではそれらの課題を明確にして、それらがMSPによってどのように解決可能なのかを見ていきましょう。

・管理対象の複雑化による要求されるスキルの多様化

最も大きな課題となりつつあります。
積極的にシステムを変化させている会社ほど、この状況に陥りやすいと言っても良いでしょう。1990年代はコンピュータの役割が定形化されたデータを処理するのが主流でした。
そして、2000年初期からオンライントランザクション主体になり、それらを多角的に分析する為に高速なサーバーを導入。そして、ダウンサイジングだ、クラサバだ!ということでサーバーの数が飛躍的に増えた結果、また統合を図るなど変化が激しいです。
そして、2010年頃では仮想サーバーベースでプライベートクラウドに集約しようという話になり、さらに最近では可能なものはパブリッククラウドに移行しようということで、現在は、それらの移行中という企業が多いでしょう。
その結果として、レガシー環境、クラサバ環境、仮想サーバー環境、パブリッククラウド環境、OSもWindowsからLinuxなどいろいろなものを同時に面倒みなければならなくなりました。
つまり、社内エンジニアはこれら全てを管理できるスキルを持っているスーパーマンである必要がでてきました。また、これらの変化は目まぐるしいスピードで起きているので、その度に人材のリソースを育てている時間もなく、結果的には手が回らなくなっているかと思われます。

・知識の属人化

あの設定は、あの人じゃなきゃわからないとか、設計はあの人の頭の中にしかないとか、どうしてこうなっているのか誰も説明できないと言うような状況はどの会社にも少なからずあります。これも、極めて複雑な環境のなかで、限られたリソースで運用管理を続けて来た結果として起きていることですが、時間がない中でとりあえず動くことを目標にして、標準化やドキュメント化を後回しにした結果、知識は属人化し、知識の継承はできなくなってしまっています。そもそも運用設計自体行われないことも普通です。

・夜間休日問わず発生する突発的な対応

管理するサーバーの数や種類が多いと、当然様々な種類のトラブルが突発的に起こります。状況によっては夜間や休日にも呼び出されることもあり、その場で何らかの対応が必要になるケースもありますが、それを困難にするのが前述の2つの課題です。対応に当たった人員が解決できないと問題は大きくなり、それが重なってくると当然エンジニアのメンタルや体調にも影響してきます。

他にもコスト削減のプレッシャーや不十分な教育の問題等もあり、これらは相互に関係しており、それぞれが重なって負のスパイラルを形成し、結果的に運用品質の低下や、エンジニアのモラルの低下を招いているというのが情報システム部門の現状です。

MSPができること

それではMSPは何をやってくれるのでしょうか。
実際にはMSPには様々なメニューを持っている多くの事業者がいて、分野に特化したメニューになっていることもあるのですが、一般的には以下のようなメニューを持っています。
この中で、メインのなるのは「運用管理業務」です。

・設計業務

 サーバーリソースのサイジング
 クラウドサービスの決定 
 ネットワークの設計
 使用するミドルウェアの決定

・構築業務

 ミドルウェアやアプリケーションの導入、移行
 設定値の指定
 作成されたサーバーやサービスの初期設定およびチューニング

・運用管理業務

 日常操作・業務
24時間365日監視 
パッチ適用
バックアップ/リストア
ミドルウェア管理
インシデント管理
問題管理
運用管理(レポート、会議)
ヘルプデスク業務

・セキュリティ業務

 セキュリティ診断/テスト
セキュリテイ対応(攻撃対応、ウィルス対応、改竄検知等)

MSPを利用することの恩恵は?

「MSPのできること」で列挙した項目は、エンジニアが日常的に行なっている作業ですが、実はこれらをMSPに委託することによって得られるのは自由な時間だけではありません。MSP事業者の的確な選定や依頼内容の吟味を行うことによって「社内エンジニアの抱える課題」で述べたような課題を解決することもできます。

・社内エンジニアの業務の進化

今まで多くの時間を割いて来た作業を委託することによって当然、他のことに使える時間が増えます。これによって、今までできていなかったIT戦略の策定、IT による企業課題の解決のような重要な業務や、属人化によって委託できない作業の棚卸しや再構築もできますし、自分が興味を持っているエリアのスキルの拡充もできます。

・委託する業務の品質の向上

課題の章で記述したように、複雑化した管理対象をそれぞれ的確に管理するためには、そのための専門的なスキルが必要です。そのような広範囲のスキルを身に付けることは時間の無い社内エンジニアには難しいことでしたが、それぞれの専門家をすでに抱えているMSPでは難しいことではありません。それらの専門家たちは当然専門分野に精通しているので、ベストプラクティスを提供することができます。これによって業務の品質は委託前よりも向上するばかりか、継続的に向上していきます。例えば、MSPへの障害対応業務の移管によって、障害時の一時対応がマニュアル化され、復旧までの時間が飛躍的に早くなることもあります。

・今までできていなかった業務の実施

同じように、時間やスキルの問題で、社内エンジニアではできていなかった業務もあるでしょう。それらの業務がMSPへの移管によって可能になる場合もあります。例えば、24時間365日の監視はその仕組みも対応するためのリソースも社内で完成させるのは難しい場合が多いため、時間帯や対応内容を限定したりしていたような場合もあるでしょう。これもMSPへの移管によってMSP側の仕組みを使用しての監視が可能になり、フルシフトの担当者によって即時の対応が可能になります。また、問題管理に関して、専門的なスキルを持つMSPの担当者が効果的な分析を行い、適切な歯止め策を策定することができるかもしれません。

・クラウド化の加速

MSPの対応メニューによっては、今まで社内エンジニアのワークロードやスキルの問題で、進んでいなかったクラウド化を加速することができます。そのようなメニューを持っているMSPにはそれぞれのクラウドサービスに特化したスキルを持つエンジニアがおり、設計から構築、移行まで全ての面倒みてくれますので、クラウド環境への移行がスムーズに行われます。また、クラウド化によりオンプレミスで現地対応などが必要だったシステムなどもMSPに委託が可能になります。

・クラウドサービスの有効活用とクラウドネイティブへの対応

クラウド環境に強いMSPのエンジニアにコンサルティングしてもらうことによって、現状のクラウドサービスの利用状態の問題点が明確になり、より効果的な活用ができるようになる可能性もあります。それによってクラウドサービスの費用が削減される場合もあります。また、それを適用した場合の変更は社内エンジニアのフォローがなくても、自動的に委託している運用管理の手順の変更につなげられることになるでしょう。さらに、MSPの強みであるクラウドネイティブのアーキテクチャーを取り入れていくことにより、開発も含めたトータルでの効率化も可能になります

MSPを利用するためには?

ここまで見て来たように、多くの課題を抱える企業が、MSPを利用することで得られる恩恵には多大なものがあります。

それでは、そのためには何をすればよいのでしょうか。
まずは、自分たちの業務の棚卸しをしましょう。場合によっては、ユーザー部門のメンバーが代わりに行なっている業務もあるかもしれませんし、すでにどこかに委託されている業務もあるかもしれません。

その中で、自分たちの強みや弱みが明確になって来ます。現在行うべきだと分かっていても行っていない業務も明確になります。その上で、委託する業務を選定します。オンプレの特殊な業務などは委託の対象になり得ない場合もありますし、場合によっては特定の業務をあえて委託しないという選択肢も出てくるはずです。

そして、この作業と前後して、パートナーとして最適なMSPを選定することになりますが、このMSP選定こそが、得られる恩恵がどのくらいになるかの最も重要なファクターになることはいうまでもありません。

選定には決まった方法はありませんが、以下の項目をポイントに選定してみてはいかがでしょうか。

・MSPが自分たちの委託したい業務のメニューを持っているかどうか
・MSP業者の社風や規模感など
・管理体制の判断基準
  ISMS(ISO27001)の取得 セキュリティの国際標準
  ITIL(ISO20000)の取得 IT運用の国際基準
  Pマークの取得 個人情報の取り扱い基準である
  その他認証
・予算とコスト

最後に

社内のエンジニアに代わるリソースとしてMSPを選択することは現状の情報システム部門の状況を見ればもう必須であると言えるかもしれません。ただ、やり方を間違えると逆に効果が少なく、課題が増える結果になることもあります。前述したように、効果を最大限にするために最も重要なのはパートナーとなるMSPの選定です。十分に信頼できるパートナーを見つけて、社内エンジニアの抱える課題を解決しましょう。

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